教授挨拶
当教室は、1976(昭和48)年に初代 塚本 長 教授が開講して教室の礎を築かれ、1998(平成10)年に着任された二代目 木村 理 教授の元で医学研究と山形県の地域医療に貢献してきました。2020(令和2)年3月に、私が三代目 教授として着任しております。
最先端医療と匠の技を融合させ、難治疾患に集学的外科治療を!
医学・医療は日進月歩であり、常に最先端の技術を取り入れて行く必要がありますが、手術手技には伝統・経験・修練により磨かれる技があります。一見相反する二つを融合させ、科学的知見に基づいて治療戦略を立てることで、難治疾患にも治癒の道が開かれます。
早期がん・低悪性度腫瘍に対しては、ロボット支援手術など新しい技術を積極的に取り入れ、低侵襲で安全・確実な治療を実践しています。高度進行がんに対しては、近年発達の著しい化学療法(抗がん剤治療)や放射線療法と手術を有機的に組み合わせた集学的外科治療の確立に取り組んでいます。切除不能がん症例が、術前治療により退縮し改めて切除を企図することで(Conversion Surgery)長期生存・治癒が得られた経験から、膵がんなど難治がんに対しても諦めない姿勢が道を開きます。本学でまもなく稼働が始まる重粒子治療センターとも協働し、難治がん治療の新たな治療戦略を確立したいと考えています。
外科的な治療介入は、病気の転帰を劇的に変えるとともに、人体へ様々な負荷をかけます。外科治療で得られる生体試料を用いた研究を積極的に行い、転帰を予測し診断・治療戦略の改善に役立つ実学としてのトランスレーショナル研究を積極的に進めていきたいと考えています。また、がんゲノム医療拠点病院の外科として、AIを活用した個別化医療(Precision Medicine)の推進にも貢献して行きます。
次世代を担う“頼られる外科医”を育成します!
病を持つ患者さんにとって医師は頼みの綱であり、大学病院や専門施設は、難治疾患の患者さん・一般医療機関からみての「最後の砦」であると思います。大学病院の外科医が諦めたら、そこで医療は終了となり、医学の進歩もないでしょう。必ずしも根治手術のみが最良の目標とは限りません。延命や生活の質(QOL)の改善が目指される場合や、非手術療法が最善の場合もあります。患者さんに取って最も大切なものを諦めない外科医でありたいと心掛けてきました。困った時に頼られる“諦めない外科医”が垣根なく有機的に連携する集団が、大学病院の外科医局であると考えます。
自ら考えて遂行できる“一人前の”外科医の育成には、専門医取得を励行するともに、研究を実施して結果を公表することが必要です。自身の考えや成果、遂行した診療を公表して批評を受けることで、行為が正当に評価され成長につながります。指導医が専門医を、専門医が修練医を、修練医が学生を指導する屋根瓦式教育をする実践する上では、指導医・専門医のレベルアップも急務と考えて取り組んでいます。
山形大学医学部の建学の精神は、「人間性豊かな、考える医師の養成」です。人間性豊かで考える外科医を具現化すれば、患者さんにはもちろんのこと、他の診療科の医師や他施設の外科医にも頼られる外科医になります。先達の経験・伝統を生かしつつ、新しい知識・技術も柔軟に取り入れ、自ら考えて着実に医療を遂行できる外科医の育成に尽力して参ります。